チンドン屋に惹かれる原点と、ちんどん通信社「芸能サロン」の感想

私には子どもの頃から惹きつけられてやまないものが二つあります。

サーカスチンドン屋

その起源も役割もまるで異なるので同列には語れないのですが、そこに異世界のような空間を生み出すところと、確かな芸があって成り立つこと。この二つは共通点だと思います。

また私にとってサーカスとチンドン屋は、憧れと同時にちょっとした畏怖の念を起こさせるものでもありました。
この二つに対する興味の入口が江戸川乱歩の小説だったからです。

私は小学三年生で乱歩の少年探偵シリーズにハマり、ポプラ社の全46巻を夢中で読みました(現在出版されている全26巻のシリーズではなく、乱歩が大人向け作品を子どもが読めるように書き直した20巻を含むハードカバー)。

乱歩の世界では、サーカスの道化師やチンドン屋はいつも不穏な空気を連れています。
特に恐怖心を植え付けられたのは、間違いなく『サーカスの怪人』と『地獄の道化師』です。

『サーカスの怪人』は当時の装丁を復刊させたポプラ文庫クラシック「江戸川乱歩・少年探偵シリーズ」に入っているので、今でも懐かしい表紙が見られますね(リンクは楽天)。

この表紙のインパクト、すごかったなあ!

変装と曲芸の名人である怪人二十面相が、実はサーカス団出身だということも子ども心には衝撃的でした(それでこそ彼の並外れた能力や離れ業の説明がつくのですが)。

人間離れした身体能力を要し、基本的にテントという「劇場」で行われるサーカスに対し、チンドン屋は道路という生活の場に登場します。
それが余計に恐怖心をあおるんですよね、すぐそこに危険が潜んでいる気がして。

チンドン屋に追いかけられる『地獄の道化師』は、トラウマ級の怖さでした。

チンドン屋は白塗りをして鬘をつけ派手な衣装をまとっているため、「素顔が分からない」ことも恐ろしさに拍車をかけます。
その辺で街頭宣伝をしている一団を見かけても、まさか自分に悪意を持った人間が潜んでいるとはふつう思いませんからね。

日常の中、想定外のタイミングで何者か分からぬ他者が、至近距離でにゅっと現れる…
一瞬で冷静さを失わせる恐怖だと思います。

このように100%乱歩によって作られた私の脳内チンドン屋像は、毒々しい鮮やかな色彩で脳内に刻み込まれ、妖しい乱歩世界への入口でもあるわけですが、実際のチンドン屋さんはもちろん、そんな恐ろしいものではありません。

今まで実際に見かけたのは数回だけですが、そのパフォーマンスで人の興味を引き宣伝を行う技術はすごいなあ、レトロな華やかさが素敵だなあと思うばかりでした。

谷六近くにある東西屋「ちんどん通信社」さん

少々マニアックな内容になってしまいましたが、そんなわけでチンドン屋さんに特別な感情を持って育った私。
空堀付近に引越して来て何が一番気になるかって、谷町六丁目駅の近くに「ちんどん通信社」さんの事務所があることですよ!

「ちんどん通信社」さんのHPによりますと、

1984年に林幸治郎(はやしこうじろう)氏をリーダーに個人商店「ちんどん通信社」を開業
1995年に社名を(有)東西屋に変更し、以後「ちんどん通信社」をグループ名として活動

してきたそうです。

毎年富山で行われる全日本ちんどんコンクールではなんと14回も優勝している、超実力派のチンドン屋集団です。

私は東西屋さんの前を通るたび、子どもに戻ったような気持ちで「わー!ここにチンドン屋さんがある!なんかすごい!」と思っていました。
そうしたらなんと、思いがけないご縁でメンバーの一人と知り合いまして!

感激しているうちに林社長のサロンが開かれると伺い、さっそく足を運んできたのでした。

前を通るたびにソワソワしていた空間なので、入るだけで内心すっごいドキドキだった!

「林幸治郎のチンドン芸能マニアックサロン」

「ちんどん通信社」のリーダーであり社長でもある林さんは、「林幸治郎のちんどん芸能マニアックサロン」を開催されています。

今回のテーマは「投げ銭の心理学」とのことで楽しみにしていましたが、まさか社長がドラキュラのような格好で出てきて歌い出すとは思っていなかったのでびっくりした!

オーラのとても大きな方です(林幸治郎氏プロフィール)。

さて「投げ銭の心理学」について。

人が「お金を出そう」という気持ちになる状況や、その背景に流れる日本特有の価値観を、社長ご自身の具体的なエピソードに絡めてお話されました。

・投げ銭を多く集める秘訣は、見せる技の難しさでも直接的な頂戴アピールでもなく、「この人に施さないと」という気にさせること。
私たちが進んでお金を出そうとするのは、なにもすごい芸や技を見た時とは限らない。

・神社では賽銭箱に小さい数字の硬貨を入れる人が圧倒的に多いのに、祈祷してもらうためには万単位をぽんと出す。
それは神様が一対一で向き合ってくれていると感じるからだ。

・大衆演劇や商売において固定ファンがつき貢がれる人たちの聞き上手ぶり。
夫婦間や親子間のありふれた話でも、自分の話を熱心に聴いてくれた、理解してくれたと感じることで「何か返さなきゃ」という気になったりする。

などなど。

いずれにせよ「投げ銭」というのはほぼ自主性にかかっているわけですが、意識している・いないにかかわらず、人は施しをすることで徳を積んでいるような気になるのではないか。

―ではなぜ徳を積むのが大切と感じるのか?

情けは人の為ならず、いつか自分に恩恵が返ってくるかもしれないから。

―それはいつ?

究極的には三途の川の渡し賃・六文銭にまで通じるのではないか。

という考察でした。

納得しやすくてとても面白かったです。

ちんどん通信社さんのファンになる

このサロン、社長のお話だけでも十分興味深く楽しいのですが、合間に歌が入るんです。
それがまた素敵でした。

歌っているゲストの青木美香子さんと、アコーディオンを演奏している仮屋崎郁子さん。

このお二人の女性がもう本当に素敵で…。

青木さんはとにかく麗しかった!

こんなに綺麗な歌声を生で聴いたのは初めてかもしれません。
美しい歌声って人を幸せな気持ちにするんですね~。

そして仮屋崎さんは、パフォーマンスを始められる前の佇まいから美しくて、一目でファンになってしまいました。

「可憐」と「粋」を併せ持つ感じ…

アコーディオンの伴奏が素晴らしいのですが、私には音楽的なことは分かりません。
だから感激の源は、それ以外の部分のすごさも大きいと思います。

仮屋崎さんの歌い手さんの引き立たせ方や、社長のお話と歌とのつなぎ方。
空気の読み方とその反映させ方がまさにプロフェッショナルだなあと感じました。

繊細な感性とテクニックと知性と経験。
この全部がないと、あんな風にはパフォーマンスできないなあと、もう感動の嵐です。

そして帰り際、仮屋崎さんの出演されるイベントを伺い、さっそく観に行ってきました。
(私こんなにミーハーだったかな?)

それはそれはかっこ良かったので、次回はその様子と感想をレポートしたいと思います!